千葉大学の改革・改善、その実績と目指すもの

                                  千葉大学長 古 在 豊 樹
1.はじめに
 国立大学の法人化以降、運営費交付金が毎年1%削減されて4年目に入ろうとしていた今年の2月末に、
経済財政諮問会議の民間議員による「運営費交付金の競争的資金化」の提案がありました。それ以降、国立
大学法人の学長は「いくらなんでも黙ってはいられない」心境になり、各方面への働きかけを強めました。
その働きかけが一要因となり、最近、この件に関しては、ゆめゆめ油断は出来ませんが、小康状態にありま
す。
 「運営費交付金の競争的資金化」はもちろん絶対に反対です。平成16年度から続いている「運営費交付
金の毎年1%削減」でさえ既に大学経営の限界を超えつつあります。そうは言いながらも、他方では、それ
ぞれの国立大学法人の学長は、この困難な現状の中で、大学の理念・目標の堅持と目標達成のための創意工
夫で日々努力しています。私立大学の学長さんのお話を聞くと、私立大学は何年も前から現在の国立大学法
人以上に経営が大変なのだとおっしゃるので、私たちも今まで以上に頑張り、今後、私立・公立大学とも協
力し合わなければとも思います。
 本稿では、上述の状況下での、千葉大学における理念・目標の堅持と目標達成のための日々の創意工夫に
ついて述べて見たいと思います。そして、皆様のご批判、ご示唆、ご指導を受けたいと思います。
 なお、文中のカッコ内の数字は、そのパラグラフの下に示されたウェブサイトのURLと関連付けられていい
ます。websiteをご覧いただくと、詳細がわかるようになっています。

2.大学経営のキーワード:「多様進化的調和」を目指して「意識の垣根を低くする」
 私が平成17年4月に千葉大学の学長に就任して以来、常に心に留めてきた大学経営のキーワードの一つ
は「調和」、特に、『多様で進化的な調和』です。つまり、総合大学としての千葉大学の組織が、その構成
員の多様性と個性を互いに認め合い、しかも学術的あるいは文化芸術的に進化しつつ全体として調和するこ
とを大学経営の根幹に私は据えています。この調和は決して予定調和でも妥協でもなく、グローナカルな視
点(2.1)から未来を切り拓き、21世紀型の真善美(学術、倫理、芸術)を追求する、領域横断型の調和です。
 そして、『多様で進化的な調和』を実現させるために私が留意していることは、大学構成員である、事務
系・教員系・技術系職員(非常勤も含む)、学生、役員の間に存在する意識の垣根を低くし、また千葉大学
構成員と千葉県の住民・企業・行政との間に存在する意識の垣根を低くし、さらには千葉大学の卒業生と教
職員・在学生の垣根を低くして、関係者全員が千葉大学憲章(2.2)に掲げられている、高い理念と目標を共有
することです。
 意識の垣根を低くすることによって、信頼感のある人間のネットワークを幅広く構築することが可能にな
り、領域横断的な教育研究と社会貢献がおのずと盛んになり(2.3)、人材が育ち、新しい教育研究領域が創
成され、さらには世界を先導する教育研究成果が生まれ出てくるからです。
(2.1) グローナカルな視点、http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/words.html
(2.2) 千葉大学憲章、http://www.chiba-u.ac.jp/general/pdf/kensyo_a4.pdf
(2.3) 領域横断型研究、http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/ideas/mode2.pdf

3.情報共有
 意識の垣根を低くするために、まず、情報公開・情報共有を徹底的に進め、広報(3.1)にも力を入れまし
た。役員会、教育研究評議会、経営協議会の資料(3.2)はもちろんのこと、学内予算の配分方針・配分額、
各年度の予算・決算(3.3)、学内外の競争的資金の採択結果(3.4)、各種行事などの重要事項を学内ホームペ
ージですべて公開し、また、出来る限り、千葉大学ホームページでも公開してきました(3.3)。月刊メルマ
ガ(3.5)も発行しました。
(3.1)新聞記事掲載一覧、http://www.chiba-u.ac.jp/general/headline/headline.html
(3.2)役員会等情報、http://www.chiba-u.ac.jp/general/council/index.html
(3.3)年度別予算・決算、http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/budget/index.html
(3.4)学内競争的プロジェクト採択、http://www.chiba-u.ac.jp/general/juten/index.html
(3.5)月刊メルマガ、http://www.chiba-u.ac.jp/message/magazine/#No23

4.毎年30回の懇談会
 さらに、部局間の垣根、学生と教職員・役員との垣根、千葉大学と県民との垣根を低くするために、学
長・理事と学生との懇談会、部局との懇談会、さらにメディア、高等学校、ボランティアグループ(4.1)、
その他の組織との懇談会を毎年計30回(4.2)ほど開催して来ました。学生らとの懇談会を通じて、私たち
は多くのことを学び合い、また人と人との交流が広がりました。キャンパス内の生協食堂前で、900人程の
学生を前に、「底力宣言!千葉大学」と称して、学長が学生に直接的に語りかけ、その内容を大学ホーム
ページから動画配信しました(4.3)。
(4.1)ボランティア交流、http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/ideas/volunteer.pdf
(4.2)懇談会日程、http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/topics/2007.html#kondan
(4.3) 底力宣言!千葉大学、http://www.chiba-u.ac.jp/topics/2007/sokozikara2/index.html

5.校友会SNSの開設
 千葉大学では5年前に磯野前学長が校友会(全学同窓会)(5.1)を創設しました。毎年秋に総会を開催し
ていますが、参加者に青年が少ないのが悩みでした。そこで、最近、「校友会報(5.2)」を卒業生向けに創
刊しました。さらに、インターネットを用いて、利用者を卒業生、在学生、現教職員、旧教職員に限定した、
SNS(social networking system)を立ち上げ、Curioと名付けました(5.3)。千葉大学関係者が、学部、学科、
所属サークルなどにもとづき、自由にコミュニティーを開設して、情報交換・意見交換をすることによって、
卒業生と在学生の垣根を低くしようと言う試みです。このSNSにより、幅広い年齢層の同窓生と千葉大学と
のつながりが強くなることを願っています。
(5.1)校友会、 http://www.chiba-u.ac.jp/alumni/index1.html
(5.2) 校友会報、http://www.chiba-u.ac.jp/alumni/pdf/koyukaiho_1.pdf
(5.3)SNS Curio、http://www.chiba-u.ac.jp/sns.htm

6.教育研究プログラム事業と新司法試験合格率
 教職員と学生の意識の垣根が低くなった成果として、キャンパス内外における学生の自主的な活動が格
段に増えました。また、複数の部局による領域横断型教育研究プログラムが格段に増加しました。特に、
平成19年度には、文部科学省などが主管する競争的な教育プログラム事業に関して、大学院GP(大学院教
育改革支援プログラム)5件(6.1)、現代GP3件を含む、計17件(6.2)が採択され、金額にして合計6億円以
上を、今後、3年間にわたり毎年獲得するという、全国の大学のトップクラスとなる快挙を千葉大学は成
し遂げました。
 今回採択された部局横断型かつ領域横断型の教育プログラムの実施により、部局間の垣根は今後もさら
に低くなり、学生および教職員の視野は広がり、同時に、普遍教育、学部専門教育および大学院教育の質
が大いに向上することになります。また、世界的な教育研究拠点としてのグローバルCOEプログラムの
来年度の獲得にもつながるのではないかと期待しています。なお、専門法務研究科の教職員と学生の並々
ならぬ頑張りにより、今年9月に発表された新司法試験の合格率(65%)に関して、千葉大学が全国ト
ップ(6.3)であったことは特筆に値することです。
(6.1)大学院GP、http://www.chiba-u.ac.jp/general/about/daiagkuinkyouiku_gp.html
(6.2) 特色ある教育研究プログラム、http://www.chiba-u.ac.jp/general/about/coe_gp.html
(6.3) 2007年 新司法試験合格率ランキング、http://nelog.nisshi.jp/2007/09/14/ls_2007/

7.外部資金獲得と産学連携
 他方、産学連携や学術研究に係わる、いわゆる外部資金の獲得額は、平成16年度には46億円であったの
が平成19年度には約65億円と、この3年間で20億円もの大幅な伸びがありました。内訳は、寄付・受託研
究・共同研究:35.4億円、科研費:19億円、21世紀COE:3.9億円、大学改革推進費:6.5億円、他:1.5億円)
(7.1)です。この外部資金の獲得額は、最近の産学連携・知的財産機構の活動の活発化および千葉大学
SEEDS基金(教育・人材育成に特化した基金、「SEEDS」は種子の意)への寄附などと相まって、今後数年
間は伸び続けると考えられます。
 これらの教育研究・地域貢献成果は、複数の部局にまたがる事務系職員と教員系職員の連携と協力の結
果です。永年の経験と英知に裏づけられた事務系職員らが発揮した高い意欲と素晴らしい能力は特筆すべ
きものでした。この事務系職員の成果を正しく評価して、制度的、組織的に反映することが今後の重要課
題と考えています。
(7.1) 外部資金とその内訳、
   http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/budget/17_18ks19_yosan.pdf

8.職場改善・待遇改善
 教職員の職場改善・待遇改善に関しては、西千葉キャンパスにおけるやよい保育所の開設、女性研究者
支援モデル事業(8.1)(8.2)の開始、非常勤職員の常勤化制度の導入と時間給の値上げなどの成果にとどま
り、不満足な結果でした。また、改革・改善の成果をあせる余り、事務局担当者への改革・改善の意義の
説明が不十分になり、関係者が不消化のまま改革・改善案の実施を押しつけることになってしまったこと
があり、反省しています。また、学生の学習環境の改善に力を入れたために、結果的に、教職員に関する
種々の面での制度改革・待遇改善が残された課題となり、今後の努力目標です。
(8.1) 支援循環型体制による女性研究者育成モデル、
   http://211.120.54.153/b_menu/houdou/19/05/07051420/001/021.pdf
(8.2) 女性研究者育成キックオフ/シンポジウム、
   http://www.gakuzyutsu.chiba-u.jp/WLB/eventlog/event071029.pdf

9.学生と教職員の協働
 教職員と学生との間の意識の垣根が低くなった成果の例として、総合大学では初めて全キャンパス(4
キャンパス)で環境ISO14001の認定(9.1)を取得したことがあります。これが、環境ISO学生委員会(参加
学生数:170名)の主体的な活動(9.2)を中心とした認証取得であることと、環境ISO委員会が極めて質
の高い「環境報告書」を出版・公表したことから(9.3)、千葉大学の環境保全実績は全国の大学から注目
の的となり、他大学から見学依頼・問い合わせが続いています。この環境ISO活動は各キャンパス周辺の地
域住民との共同作業でもあります。他にもキャンパスの省資源・環境保全に取り組んでいる学生サークル
がいくつかあります(例えば、9.4)
(9.1)千葉大学環境ISO事務局、http://kankyo-iso.chiba-u.jp/
(9.2)環境ISO学生委員会、 http://env.chiba-univ.net/
(9.3)千葉大学環境報告書2007、http://www.chiba-u.ac.jp/general/iso/hokoku.html
(9.4)環境系学生サークルSun & Co.、http://sunco.chiba-u.info/

10. 経費節減と資金運用
 環境ISO活動と連動して行われた、光熱水料節減プロジェクトにより、平成17,18年度の2年間で、
千葉大学は年間の光熱水料を1億円節減し、年間のCO2排出量を10%削減しました。また、事務費節減と余
裕金運用益の合計が1億円を超えました。すなわち、環境保全活動・省資源活動が、大学経営の重要課題
である経費節減などと結びつき、2億円以上となる成果を得たのです。他方、柏の葉キャンパスにある環
境健康フィールド科学センターにおける18年度事業収入(漢方診療所収入と農産物・加工品販売収入)が
17年度のそれの40%増となり、1億円を超えました。

11.地域連携
 地域連携に係わる、千葉大学と千葉県の企業・行政・住民との間の垣根は、最近、とみに低くなってい
ます(11.1)。千葉県、千葉銀行、千葉ロッテマリーンズ、JEFユナイテッド市原・千葉などとの包括連
携協定の締結はその序曲であり、現在、千葉大学教職員・学生と千葉県関係者との領域横断的協力は日々
増え続けており、県民から高く評価されています。まちづくりを商店街の方々と一緒に行っている学生の
サークルがいくつもあります(例えば、11.2)。
 最近、千葉大学に設置された、地域観光創造センター(11.3)および予防医学センターなどを通しての地
域連携の今後の発展が県民にも期待されています。こうした千葉大学の展開は、今や大いに他大学の関心
を引きつける「輝く個性」となっています。これらの連携の成果は、最近設置された組織(11.4)である、
広報室、地域連携推進企画室(11.5)、基金室、産学連携・知的財産機構(11.6)、学術推進機構、教育総合
機構、高大連携企画室(11.7)における構成員の垣根の低さが貢献していると言えます。
 今まで私が話してきた大学改革の実績は、学長が先導したのではなく、自分たちが独自に計画し、達成
したものだ、と胸を張りたい千葉大学の教職員が数多くいると思います。そのとおりです。そして、それ
こそが、私が目指すリーダーシップ論の実現なのです。
(11.1)地域連携、http://www.h.chiba-u.jp/kanko/kozai/pdf/071003.pdf
(11.2)Dropsまちづくり、http://dropsblog.seesaa.net/
(11.3)地域観光創造センター、http://www.chiba-u.ac.jp/regional/kanko.html
(11.4)千葉大学組織図、http://www.chiba-u.ac.jp/general/about/pdf/organization.pdf
(11.5)地域連携推進企画室、http://www.chiba-u.ac.jp/regional/chiiki.html
(11.6)産学連携・知的財産機構、http://www.ccr.chiba-u.jp/
(11.7)高大連携企画室、http://koudai.cfs.chiba-u.ac.jp/

12.地域貢献の成果を全国・世界に発信する
 地域連携・地域貢献活動の成果が、その活動成果を通して、課題が全国的、世界的的な広がりを持ちは
じめている研究プロジェクトがいくつかあります。例えば、ケミレスタウン・プロジェクト(シックハウ
ス症候群対応のまちづくり)(12.1)、地域サステナビリティー学研究プロジェクト(12.2)(12.3)、地球福
祉研究センター(12.4)の活動などです。
(12.1)ケミレスタウン・プロジェクト、
   http://www.h.chiba-u.jp/center/research/chemiless.htm
(12.2)地域サステナビリティー学アソシエーション、
   http://www.chiba-u.jp/sustainability/index.html
(12.3)サステナブル地域社会、
   http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/ideas/070919_seikatu.pdf
(12.4)地球福祉研究センター、
   http://globalwelfare.jp/page.do;jsessionid=A86C426318DA887D6C723C5E7DB94F2B

13. 学長の役割と教職員のリーダーシップ
 学長の役割の1つは、千葉大学の憲章、行動規範(13.1)、環境方針(13.2)、国際化の方針(13.3)などの
理念、遠い目標、規範、方針を示し、大学構成員が自主性を発揮しやすい環境、また外部と交流しやすい
環境をつくることです。そして、教職員・学生・地域住民の自発的・内発的な提案・創意・工夫を共感と
感動をもって受入れ、支援することを、学長が約束することにより、各人または各グループは、各自のリ
ーダーシップを発揮して、心の火を燃え上がらせ、見事な教育研究を成し遂げていくのです。そして、個
別課題に関しては、各教職員、部局、グループがリーダーシップをとるのが大組織には必要であると考え
ています。
(13.1)千葉大学行動規範、http://www.chiba-u.ac.jp/general/pdf/kihan_a4.pdf
(13.2)千葉大学環境方針、http://www.chiba-u.ac.jp/general/pdf/environmental_policy.pdf
(13.3)千葉大学・国際化の指針、http://www.chiba-u.ac.jp/international/07kokusai.pdf

14. 学長主導の重点実施事項
 もちろん、学長でなければ出来ない、経営方針の表明、重要事項の決断、社会との橋渡し、教育研究環
境づくり・学習環境づくり、があります。私自身も、毎年、年度初めには、その年度の重点実施事項約15
〜20項目をホームページにて公表してきました(14.1)。また、折に触れ、学長の考えを、千葉大学ホー
ムページの「学長室」コーナーで公開してきました(14.2)。
(14.1)年度別重点実施事項、http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/challenge/index.html
(14.2)学長室から、http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/index.html

15. 学習環境の改善
 学長主導による改革の例として、学長就任直後、学生の学習の場である校舎、教室、機器設備、キャン
パスをつぶさに観察して、その学習環境、特に普遍教育に係わる学習環境の安全性を配慮した改善を決断
しましたことが上げられます。この学習環境改善のために平成17-19年度で48億円を投入しました。内訳
は、施設整備費補助金40億円、全学一括管理によるキャンパス・校舎整備費4.2億円、学長裁量経費2.5億
円、概算要求による校舎改修1.5億円等です。この学習環境改善を、平成17年度当初に定め、教育研究評議
会で了承された5年計画にしたがって、平成20、21年度と続ければ、学習環境は3年前と比較して格
段に良くなります。

16. 国際戦略
 ソフト面では、勉学あるいは課外活動で活躍している学生の表彰を大幅に拡充しました(16.1)。また、
今年から、エクセレント・スチューデント制度を創設して、奨学金、授業料免除で優秀な博士課程学生を
6名受け入れることにしました。さらに、今年の8月に、中国の日本学術振興会・北京事務所の中に、千
葉大学中国オフィスを開設しました。同時に、校友会の初の海外支部として、中国校友会を設立しました
(16.2)。さらに、清華大学学長(16.3)、中国農業大学学長(16.4)、上海交通大学学長(16.5)などと面会
し、交流を深めました。
 これらの国際戦略は、他の有力大学に比較して遅れていた千葉大学の国際戦略の巻き返しの第一歩であ
り、今後、他の国との国際連携を含めた強力な国際化を進める必要があります。
(16.1)学長表彰、http://www.chiba-u.jp/student/pdf/hyosyo18-2.pdf
(16.2)中国校友会の設立、http://www.chiba-u.ac.jp/alumni/pdf/koyukaiho_1.pdf
(16.3)清華大学訪問、http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/topics/19_8_23.pdf
(16.4)中国農業大学訪問、http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/topics/19_8_4.pdf
(16.5)上海交通大学訪問 http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/topics/327houmon.pdf

17. その他の改革・改善
 上述の他に、改革・改善された事項は数多くあります。その他の改革・改善事例を含めて、過去3年間
の主な改革・改善事項は、千葉大学のホームページに示されています(17.1)。ただし、そこに示されてい
る事項は大学本部が係わった、あるいは本部が主導した事項だけですので、部局(学部・研究科・センタ
ー)独自の多数の改革・改善事項は含まれていません。そして、部局での改革・改善の中には本部が今後
見習うべき素晴らしい改革・改善事項が少なくありません。
(17.1)本部主導の改革・改善事項、
   http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/challenge/index.html

18. グローナカルな視点から地域と地球に貢献するユニバーシティを目指して
 千葉大学は、首都圏に位置する地方大学でありながら、9学部からなる総合大学であり、成田国際空港
の近くにも位置するという特徴を持ちます。
 また、歴史的には、100年以上前に創設された専門学校(教育学、医学、薬学、工学、園芸学)を基盤と
して、58年前に総合大学となった特徴を有します。この特徴から、千葉大学は、地域貢献型の高度専門職
者を育成する教育研究機関として伝統が今も引き継がれています。
 他方、総合大学になった後に創設された理学部、文学部、法経学部、看護学部の中の、理学部、文学部、
法経学部の教員の大半は、総合大学(university)に求められる「人類の叡智」を極める役割を担って、
教育研究を行っています。専門学校的な歴史的伝統有する学部と総合大学的な学部の両方を有する千葉大
学の特徴の統合的進化と調和が21世紀の千葉大学の達成目標であると考えられます。そして、各学部に
おいても、上述の2つの特徴を合わせ持つことが目標です。この統合的進化を成し遂げるためのキーワー
ドが、グローナカル(glonacal: global, national、localの合成語)な視点(18.1)からの領域横断型教
育研究です。
(18.1)グローナカルな視点、http://www.chiba-u.ac.jp/message/president/words.html

19. 千葉大学の挑戦 −今後に向けて−
 21世紀の世界では、グローバル化(地球ボーダーレス社会の進行)、インターナショナル(国際)化、ナ
ショナル化(多様な国民・民族文化の尊重)、ローカル化(地域市民の自主性の尊重と連帯)が複雑に相
互依存しながら同時進行しています。そして、今、これらの同時進行的変化を地球生態系全体の調和的進
化とする駆動力を創造する知力が求められています。この知力による全体調和的進化は、現在の人文社会
科学と理工系・医薬看系科学技術の基盤を、グローナカルな視点から再構築し、さらにその成果を学術コ
ミュニティーおよび市民社会で試行し、改良し続けることによって実現します。この再構築と試行・改良
に千葉大学は貢献したいと思います。なお、グローナカルな視点とは、地球、多国間グループ、国民・民
族、市民社会の自律性、多様性、共通性および相互依存性を、重層的かつ双方向的に理解し、配慮する視
点です。

20. 目指すべき千葉大学像
 上に述べたことを千葉大学の未来像としてキーワード的にあらわすと、未来志向型大学、グローナカル
大学、領域横断型大学、多様進化調和型大学、エコ・アメニティー・キャンパス大学となります。それぞ
れのキーワードの意味をもう少し具体的に示すと以下のようになります。
1)千葉大学は、大学憲章の理念と目標に基づき、世界の「いま」を生きる英知を磨きながら進化し、過
  去を未来につなげ、未来世代の生命の輝きに貢献していく、目的意識が強く底力のある人材の育成に
  挑戦し続ける、《未来志向型大学、Visionary University》をめざします。
2)千葉大学は、成田国際空港のある千葉県に位置する首都圏の地方国立大学であることを活かして、グ
  ローナカルな視点から、地域的、国内的、国際的および地球的課題に挑戦する、《グロ−ナカル・ユ
  ニバーシティー、Glonacal University》をめざします。
3)千葉大学は、9学部からなる大規模総合大学であることを活かして、現代社会の抱える公共的・学術
  的課題に、環境・健康・ケアをキーワードとして、領域横断的・領域創造的に貢献していく、《領域
  横断型大学、Transdisciplinary University》をめざします。
4)千葉大学は、多様な教職員が協働し、また教職員と学生が協働して、内発的知的交流を通じて個性と教
  養を磨き合い、全体調和的な持続的福祉社会の実現を図る、《多様進化的調和大学、Harmonized 
  University with Rich Diversity and Evolution》をめざします。
5)千葉大学は、学生・教職員の自発的学習ならびに基礎的・応用的な教育研究・地域貢献活動を、《緑
  が豊かで快適なキャンパス、Eco-amenity Campus》で行うことをめざします。

21. 思い起こせば3年前
 人間というのは、案外、忘れやすいものです。3年前に私が学長に就任したときに、多くの千葉大学教
職員が「千葉大学の法人化への取り組みは、他の有力大学に比較して3〜4年遅れていて、平均的な大学
より遅れている」と言っていました。
 過去3年間を思い返しますと、学長就任1年目は、学長・理事にも大学経営情報が明らかでない状況で
大学経営をせざるを得ない場合があり、不合理な経営判断、非効率な対応をしてしまったことがありまし
た。2年目には制度的・組織的な改革が行われ、教職員の改革への意識が向上し、また大学経営情報の公
開が進み、その結果、改革のスピードが上がり始めました。3年目の今年は、財務、教育、研究、地域連
携、産学連携の各側面で教職員が互いに協力し、大きな成果が出始めています。
 したがって、現在の体制と基本方針は間違っていないと感じています。この体制と方向性を維持し、教
職員が理念と目標を共有し、互いにパートナーとして働けば、来年度、再来年度は今までよりも質的にも
量的にも、大きな教育研究成果が期待されます。
 3年経った今、千葉大学は、法人化への取り組みという点では、改革が進み、平均的な大学よりかなり
進んでいるのではないかと思います。言い換えれば、千葉大学の改革は、過去3年間、平均的大学の2倍
程度のスピードで進んだのではないかと思います。
 先ほど公表された、文部科学省の大学評価委員会の平成18年度実績評価では、千葉大学は、「度計画
の16項目すべてにおいて、中期目標・中期計画を「上回って実施している」あるいは「十分に実施して
いる」と評価されています。平成19年度の評価は平成18年度の評価より格段に高くなることは間違い
ありません。
 現在の方向と速度で千葉大学が進めば、近い将来、千葉大学は日本で有数の、そして世界を先導する、
「生命のいっそうの輝きを目指す未来志向型の総合大学」になり、千葉県、日本、アジア、世界、地球に
貢献し、その貢献を通じて、千葉大学は益々多様で進化的な調和を実現できると思います。その兆しは、
今でも、いたるところに現れています。お互いに、つねに、より高きものを目指して、励まし合い、切磋
琢磨して、頑張って成果を出した教職員・学生が高く評価され、千葉大学構成員全員が皆で喜び合う千葉
大学に益々なりつつあると感じているのは私だけではないと思います。この困難な時代状況を変えるのは、
遠くを見据えた、千葉大学の教職員・学生の知力ではないかと思います。